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病気腎移植:万波医師らの医療 4学会が非難の声明 毎日新聞 サイエンス 医療

病気腎移植:万波医師らの医療 4学会が非難の声明 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の泌尿器科部長、万波誠医師(66)や弟の廉介医師(61)らによる病気腎移植問題で、日本移植学会など5学会が31日、大阪市内で会合を開き、うち4学会が病気腎移植を非難する統一声明を発表した。 毎日新聞 サイエンス 医療 
 声明では「実験的医療が医学的・倫理的な観点から検討されずに閉鎖的環境で行われ、厳しく非難されるべきだ」と指摘。ドナー(臓器提供者)の治療が適切に行われず摘出されたことや、レシピエント(移植を受ける患者)へのがん転移の可能性に言及し「移植医療として多くの問題があったと言わざるを得ない」と強く否定した。

 日本移植学会などによると、医学的にはネフローゼや尿管狭さく、腎動脈瘤(りゅう)などの病気については腎臓を温存して治療をすべきだったと評価。がんの腎臓については、移植に用いることは転移の可能性があり、免疫抑制剤を使うと再発のリスクが高まることから妥当性がないとした。

 また全42件のうち多くの症例で、腎臓摘出や摘出後、移植に使うことについて文書によるインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)が確認できなかったという。摘出の手術法についても、移植を意識した術式でリスクが高まった例もあったとした。

 声明では、病気腎移植を含むこうした実験的医療を将来、新しい治療法として行う時のために、日本移植学会が学会員と非学会員による審議のための組織を整備することも盛り込んだ。

 声明を出した4学会は日本移植学会、日本泌尿器科学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会。日本腎臓学会は、5月の理事会で承認を得た上で参加を決める。

 万波誠医師は31日、報道陣に対し「非常に残念。病気腎移植は医者と患者が理解し合ってやったことで、間違っていたとは思わない。自分は続けたいが、医療は1人ではできない。(厚生労働省の方針が出れば)それを無視してまでは続けることはできない」と話した。【野田武】

 ▽厚労省臓器移植対策室の原口真室長の話 生体臓器移植については、臓器売買を除いて規制のない臓器移植法の運用指針を今後改訂したい。

 ◇臓器移植法運用指針の改正に反映を=解説

 病気腎移植の問題は、移植医療では一つ間違えばドナーの安全や患者としての権利を損ないかねないことを、関係者に再認識させた。

 本来、生体、死体移植ともドナーに医学的な利益はなく、だから多くのレシピエントはドナーへの感謝の思いを抱えて生きていく。しかし、病気腎移植では多くのドナーの治療が不適切だったのに、十分な情報を持たないドナー本人が「納得している」という理由で正当化された。「捨てられた腎臓」だから、レシピエントの心理的負担も比較的少なかったかもしれない。

 だが、ドナーの存在を忘れて移植医療は決して成り立たない。一刻も早くドナーを増やし、移植待機患者を救いたいという関係者の気持ちは当然だが、移植医療の普及に「特効薬」はない。

 国は、病気腎移植が公的なルール不在の状況で繰り返されたことを重く受け止めるべきだ。そして、今回の医学的な決着を受け、「ドナー軽視」の移植医療が繰り返されることのないよう、早急に臓器移植法運用指針の改正に反映することが求められる。【大場あい】

 【ことば】病気腎移植 宇和島徳洲会病院の万波誠医師ら「瀬戸内グループ」と呼ばれる中国、四国地方の医師が、腎臓病や泌尿器科系の病気の治療のために摘出した腎臓を、医師の裁量で選んだ第三者に移植した問題。昨年11月に発覚し、91年1月〜06年9月に42件実施されていたことが明らかになっている。臓器摘出やがんなどの臓器を移植する医学的妥当性や、日本移植学会の倫理指針以外に同様の移植を規制する公的なルールがないことが問題視された。