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病腎移植の芽「残したい…」 病理医が「良心の手紙」 産経新聞 社会 話題 

病腎移植の芽「残したい…」 病理医が「良心の手紙」 2月下旬、病腎移植の再開を求める活動をしている岡山市の弁護士(54)に1通の手紙が届いた。差出人は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で行われた病腎移植について医学的検証を委嘱された病理医。 産経新聞 社会 話題 
万波誠医師(66)が行った一連の病腎移植に厳しい見解を示した専門委員会の一員だが、手紙では「病腎移植の芽をつぶしてはいけない」と本心を語り、厳しい見解への「違和感」もつづっている。医師が発した「良心の声」は、医学界の揺れる立場を映している。(石塚健司)

ゆがめられた報告書…「結論ありきだった」
 手紙を書いたのは、日本病理学会理事の堤寛(ゆたか)・藤田保健衛生大学医学部教授(55)。産経新聞の取材に「多くの患者さんのために、私が発言しなければならない」と語り、手紙の公表に承諾した。

 堤教授は、宇和島徳洲会病院の調査委員会が病腎移植症例の検証のため関係各学会などに派遣を受けた専門委員会(6人)に参加。昨年12月からカルテ閲覧や聞き取りなどの調査を進めてきた。

 専門委が2月18日、調査委に出した報告書は、「倫理的にも科学的にも許されない」(移植担当委員)、病腎の摘出も「移植目的の手術で全症例が不適切」(泌尿器科担当委員)など否定的なものだった。

 だが、堤教授が見た万波医師の実像は、調査前に持っていたイメージと違うものだったという。

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患者に向かう姿勢に深い共感
 「万波医師の患者に向かう姿勢に深い共感を持っております。『すごい人がいる』が私の実感です。彼は患者に寄り添っています。よほどの自信と信頼がなければできないことです」

 病腎移植を受けた患者の多くが、親族からの生体腎移植を受けた後に病気を再発し、しかも通常移植より高齢で、病腎以外にドナー(臓器提供者)を得られない身だったこと。都会の医療を受けられる経済状態ではなく、透析生活のつらさに耐えられず、移植を強く望んでいたこと。患者たちの生存率が、年齢や健康状態のわりには死体腎、生体腎に劣らないこと。それらの事実に心を動かされ、「患者さんの経済状態を考慮し、最小限の検査で診療したことも痛いほど分かりました」とも記している。

 ただ、万波医師は病腎移植にあたって倫理審査を行わず、カルテの記録もずさんで、患者やドナーへのインフォームド・コンセント(説明と同意)の手続きを文書化していなかった。これらは、新しい医療を行う上で致命的な誤りというしかなかった。

 「彼にもう少し欲があれば、科学的志向性が強ければ、まったく違う展開になったでしょう。残念です。でも、それがあの人の人となりなのでしょう」

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 堤教授は専門委の討議の場でも、こうした考えを力説した。だが、報告書には盛り込まれず、翌日の新聞では「全員一致で全症例が否定された」とゆがめて報じられた。

 「びっくりしました。一体どうなっているのでしょう。私の認識と随分違うからです。学会とは融通のきかないものですね。それに輪をかけてマスコミはひどい」

 関係学会による病腎移植「原則禁止」の統一見解に向けた根回しが進む中で、学会の会合が開かれるたび、「万波医師がB型肝炎感染者の腎臓を移植した」などと、事実と異なる情報が流布されたことに不快感を示している。

 専門委では、移植に使われた腎がんの腎臓の摘出3例について、「4センチ未満の腫瘍(しゅよう)は摘出しないのが常識」との理由から「移植ありきの不必要な手術」と断じられた。

 この「常識」を「現実離れしている」と感じた堤教授は今、各地の医師たちにメールを送り、腎がんの摘出例についてのデータを募っている。既に多くの病院から、4センチ未満でも大半が摘出されていることを示す報告が寄せられている。

 「初めから結論ありきという雰囲気の検証作業だった」と振り返る。

 万波医師は、手を尽くした末の最後の手段としてしか病腎の摘出を選択しなかったと堤教授は確信している。だが、専門委は万波医師に、質問に答える以外は発言を許さず、「教科書にない」「記録がない」などの理由で主張を退けた。

 万波医師は確かに日本の移植医療のルールを無視した。だが、「患者さんのためだけを思い、名誉欲などみじんもない医者をいじめてどうするのか」。学会に対する思いだ。

 日本移植学会などは31日、病腎移植に関する統一見解を取りまとめる。

 「基準を甘くしろとは言いません。でも、患者さんたちの声にもっと耳を傾けるべきではないでしょうか」

 堤教授はそう訴えている。