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ハンセン病:写真集出版、人権侵害見つめた40年 断種、堕胎…療養所の実態を記録 毎日新聞 東京朝刊 サイエンス 医療

ハンセン病:写真集出版、人権侵害見つめた40年 断種、堕胎…療養所の実態を記録
◇断種、堕胎、強制労働…療養所の実態を記録
 ハンセン病の問題を約40年追い続けてきた大分県在住の写真家、大谷英之(えいじ)さん(75)の写真集「ここに人間あり」(毎日新聞社刊)が出版された。患者への人権侵害に社会の関心がほとんど向けられていなかった1960年代から療養所に通い、断種や堕胎、強制労働などの事実をカメラに収めてきた。01年の国賠訴訟判決でハンセン病問題への関心が高まったが、それ以前の療養所や患者の実態を記録した写真集は数少なく、貴重な資料となりそうだ。【江刺正嘉】 毎日新聞 東京朝刊 サイエンス 医療 

 大谷さんは大分県湯布院町(現・由布市湯布院町)生まれ。大正時代から同町に1軒だけあった写真店を営む父親の影響で写真に興味を持ち、高校卒業後、報道写真家を目指して上京。東京写真大(現・東京工芸大)を卒業後、ニッポン放送やフジテレビに30年余り勤め、主に番組宣伝用の写真を担当した。

 ハンセン病と出合ったのは67年。新宿駅近くの居酒屋でハンセン病療養所「多磨全生園」(東村山市)の男性入所者と知り合い、初めて同園を訪れた。園内に火葬場や納骨堂があり、園内作業や断種・堕胎を強いられていたことを知った。療養所とは名ばかりの人権侵害を目の当たりにし、「自分が知った以上、見過ごせない。事実を風化させないために写真を撮り続けよう」と心に誓った。

 休日や代休を利用して療養所に通ったが、入所者に信頼されるのは容易ではなかった。最初は「バカヤロー」と怒鳴られ、石が飛んできて、一枚も撮れずに帰ることも珍しくなかった。しかし、何度も足を運ぶうち、背を向けていた入所者も心を開き始めた。「うちのカレンダーには『こどもの日』はない」「自分の姿を見たくないから鏡も置かない」。入所者の言葉に涙し、レンズを向けた。

 大谷さんは86年に定年退職して湯布院に戻ってからもハンセン病をライフワークにしてきた。写真集には撮りためた約2万枚の中から、堕胎されて子供を持てず、物言わぬ人形が唯一の話し相手となった高齢の女性など102枚を収めた。大谷さんは「国民の多くがハンセン病問題を知らないことで、結果的に差別が助長されてきた。その事実を写真集で知ってもらえれば」と話している。

 「ここに人間あり」は定価3000円(税別)。