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コムスン:売却計画…「利用者本位」できる? 毎日新聞 社会 事件 コムスン不正問題 無断転載禁止

コムスン:売却計画…「利用者本位」できる? 「本音で言えば一括譲渡がいい。しかし自治体の意向、世論は分割だった」。訪問介護最大手「コムスン」の樋口公一社長は31日の会見で、介護事業の売却計画が苦渋の決断だったことを明かした。売却先が決まらなかった場合は「ケース・バイ・ケース」と明確な回答は避けた。9月上旬までに利用者本位で売却先を決められるのか。利用者からは「環境が変わって状態が悪化することもあるのでは」、自治体からも「利用者の引き継ぎが円滑に行われるまでは安心できない」などと不安げな声が漏れている。 毎日新聞 社会 事件 コムスン不正問題 無断転載禁止  
同社の虚偽指定申請が最初に発覚した東京都の利用者は全国最多の延べ約1万4000人に上る。都福祉保健局は「『第2のコムスン』を生まないよう、適正な譲渡先が決まるまでは安心できない」と慎重に受け止める。都で売却先を決める訪問介護事業所は57カ所。同局は「これだけの規模だと譲渡先は大手にならざるを得ない」と予想するが、他の大手2社でも介護報酬の不正請求などが発覚しているだけに不安はぬぐいきれない。

 05年度からコムスンに訪問介護事業を全面委託してきた北海道利尻富士町(利尻島)は「とにかく、移行先が早く決まってほしい」と困惑する。人口約3000人のうち34%が65歳以上で、約20人が同社を利用する。町福祉課の桜庭均課長は「介護事業を町が独自にやるには負担が大きすぎる。北海道の事業者が決まったらすぐに事業継続を要請したい」と話す。

 母親(74)が訪問介護を受けている神奈川県大和市の男性(42)は、現在のヘルパーによるサービス継続を望む。「事業所の引き受け手が見つかればいいというのではなく、ヘルパーと利用者を一対のものとして譲渡を考えてほしい。それが利用者本位」と注文をつける。同社女性社員は「分割譲渡で継続できるのか不安もある。地域によってサービスにばらつきが出るのでは。売却先が決まらないと何とも言えない」と言葉を濁す。元同社社員の男性(27)は「採算の合わない地域もあるはず。今の介護報酬ではどの事業者でも厳しい。制度上の問題点に踏み込んでほしい」と厚生労働省にも注文を付けた。

 売却先選定のための第三者委員会委員長、堀田力弁護士は会見で「公正に、公益性を重視してなるべく早く譲渡先を選定したい。利用者の利益になることが絶対的な基準となる」と述べた。

 ◇解説…介護報酬改善など制度見直しが急務

 訪問介護最大手「コムスン」の全介護事業からの撤退が31日、正式決定した。「事業は円滑に引き継がれ“介護難民”は生じないはずだ」と厚生労働省は予想するが、利用者に今までと同水準のサービスが確保されるか否かは現時点では不明だ。

 相次いだ虚偽申請、常態化していた不正請求など、倫理欠落の経営を続けた同社。“退場”は当然だが、業界の「ガリバー」に育つ前に、行政がチェックできなかったのか。コムスン問題を受け発足した厚労省の有識者会議でも、規制の甘さを指摘する声が相次いだ。厳罰だけが解決策ではないが、第2のコムスンを生み出さないための新たな規制は不可欠だろう。

 一方、高齢者の増加で今後10年間に新たに40万〜60万人の介護労働者が必要と試算されている。しかし介護報酬の低さなどから、介護労働者の給与は全労働者平均の6〜7割と低水準で、平均勤続年数も約5年。こうした現実が、今回の問題の背後に潜んでいる。

 厚労省はコムスンの処分にあたり「利用者保護を最優先に」と繰り返した。しかし真に利用者保護を実現するためには、介護労働者の給与の原資となる介護報酬の改善や人手不足問題の解消など、健全なサービス提供に必要な環境づくりのための介護保険制度の見直しが急務となっている。【柴田朗】