見る・聞く・感じる:こころの健康学 「鈍感力」ないと損?敏感ならでは…=飯田紀彦
◇「鈍感力」ないと損?敏感ならではの危険回避も
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」。古今集の歌人、藤原敏行は、季節の推移を風の音で感じ取ったようです。
しかしながら一般に人間は、感覚機能の随分と鈍い生き物で、危機の状況のかすかな兆候を見過ごしてしまって、ひどい目にあうことがままあります。最近は、「すべての人を信じなさい」などと、対人関係のやりとりで、かすかな兆候を感じ取る訓練すら良くないことと教えるような極端な教育を受けて、全く無警戒、無防備なまま、鬼のいる世間を渡ろうとして失敗する若者もいます。 毎日新聞 大阪夕刊 暮らし 健康 病を知る 無断転載禁止
危険な状況のかすかな兆候を感じ取る能力は、まず両親から受け継いだ感受性、豊かな素質が基礎となり、その後の家庭のしつけや、学校や社会でさまざまな出来事を体験することによって作られていきます。
自律神経系の検査をすると、おおよそ3分の1の人は、環境の変化に敏感に反応する感受性の細やかなタイプ。大の字になって眠れない、低血圧、朝が弱く、冷え性である、アレルギー体質、乗り物酔いをする、天気の悪いときには体調が悪いなどの特徴があります。逆に、今の流行語で言えば「鈍感力」の強い(?)人は、その反対の特徴を示し、やはり3分の1ぐらいいます。あとの3分の1は、どちらでもない中立のタイプです。
さて、かすかな危険兆候を感じ取る人は、「鈍感力」を持った人と比べて、駄目なタイプ、あるいは人生で損をするタイプなのでしょうか。実は、それは一概には言えません。
感受性の強い人は、困った環境にさらされると、まずダウンしますが、さっさとその場から逃げて助かる場合もあるのです。人類は、敏感と鈍感の両者の組み合わせでうまく生き続けてきたようです。(関西大学社会学部教授、精神科医)
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- 2007/08/31(金) 15:15:00 |
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