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道路と命、どちらが大切ですか?−NPO法人医療制度研究会副理事長、本田宏医師 産経新聞 主要ニュース 生活 からだ 無断転載禁止

道路と命、どちらが大切ですか?−NPO法人医療制度研究会副理事長、本田宏医師 「道路と命、どちらが大切ですか。(ガソリン税暫定税率を維持し、道路建設を声高に主張する)九州の有名な知事も、どげんかせんと」と冗談を交えながら、私は日本の半端でない人員不足や過酷な労働環境など医療現場の深刻な実態を全国で訴えている。
 もちろん、私も生活に必要な道路予算まで削るべき−などの極端なことは主張していない。
 しかし医療崩壊の日本では、たとえ道路ができても、たどり着いた先の病院は、医師不足で閉鎖されていたという地域が全国で拡大しているのだ。 産経新聞 主要ニュース 生活 からだ 無断転載禁止 

 埼玉県の一勤務医の私が、昨年だけでも北海道から沖縄まで全国で90回も講演に呼ばれた事実こそが、全国で医療崩壊が進行している動かぬ証拠だ。

 日本の医療崩壊の原因は明らかである。その第1の理由は30年以上の長きにわたって政府が行ってきた医療費抑制策だ。

 その結果、現在日本の国民1人当たり医療費は先進国(G7加盟国)中最低(OECD Health Data 2005)である。

 国内ではずっと医療費は高すぎる、無駄が多いと喧伝(けんでん)されてきたが、日本の病院が胃がんの手術(4週間入院)でもらえる総医療費は、せいぜい120万円(先進国中最低)程度。

 これを高速道路の上り下り1キロおきに設置されている緊急電話1台が250万円(原価40万円)で設置されていることと比べれば、いかに日本の医療費が安いかは一目瞭然だ。

 崩壊の第2の理由、それは医療費抑制のために政府が医師養成数まで抑制し、医師の絶対数が不足したからだ。

 現在の日本の医師数26万人はOECD(経済協力開発機構)加盟国の人口当たり平均と比較すると、絶対数で12万人以上足りない。

 しかもその26万人は実働数ではなく、90歳以上の超高齢者までカウントされているのだから、全国で医師が不足しているのは当然の帰結なのだ。

 さて現場から見ればあまりにも遅きに失したが、福田首相が5月にも医師不足の緊急対策として、2008年度の診療報酬改定に伴う医師確保策(医師不足が深刻な病院診療科に対する1500億円の重点配分)を表明したらしい。しかし医療崩壊の背景となってきた長年にわたる低医療費と医師養成抑制策を抜本的に見直すことなしに、1500億円程度では「焼け石に水」で終わることは、疲弊した現場から見れば火を見るより明らかである。

 日本政府は近年、公共事業予算を大幅に削減し、社会保障費は上昇の一途だから医療費削減という理屈で、さらなる医療費抑制を図っているが、日本の公共事業予算(GDP当たり)は削ったといってもまだ世界一。これに対し、社会保障費は増加したといっても、OECD平均にも満たないのが現実だ。

 正しい情報を国民が知らされなければ、正しい判断はできない。日本は「富国強兵」から戦後は「富国強経」になったが、これからの日本は「豊国幸民」を目指すべきではないか。「豊かさ」は心の豊かさのことでもある。団塊の世代が高齢化し、世界一の超高齢化社会は目前だ。小手先の改革では医療ばかりか、日本が崩壊する。(寄稿)

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 ほんだ・ひろし 昭和29年、福島県生まれ。弘前大医学部卒業後、東京女子医大の外科医として勤務。昭和64年から済生会栗橋病院(埼玉県)に移り現在、副院長兼外科部長。著書に「誰が日本の医療を殺すのか」(洋泉社)などがある。