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穀物価格高騰:消費超せぬ生産量 背景に途上国の人口増 毎日新聞 ニュースセレクト サエインス 環境 無断転載禁止

穀物価格高騰:消費超せぬ生産量 背景に途上国の人口増 穀物価格の高騰が続いている。消費拡大で在庫も30年ぶりの低水準となる中、穀物生産を飛躍的に拡大する「農業革命」が不可欠との意見も出始めている。食糧が安い時代は終わったのか。世界の状況を点検した。【ロンドン藤好陽太郎、ワシントン斉藤信宏】 毎日新聞 ニュースセレクト サエインス 環境 無断転載禁止 
 穀物価格の高騰は、06年にオーストラリアの干ばつで小麦が大不作となったのを機に始まり、以後、大豆など他の穀物に広がった。

 価格高騰の恩恵を狙い、世界の農家は生産を増やし、07穀物年度(07年7月〜08年6月末)の穀物(小麦と、大麦など粗粒穀物)生産量は、16億6900万トンと3年ぶりに過去最高を更新する見通しだ。だが、消費量は16億8100万トンと生産量を上回る。在庫は3年連続で減り、77年以来の低水準となる見込みだ。

 消費拡大は、途上国の人口増や、所得増加により牛肉や豚肉の消費が急増したことが背景にある。

 中国では、06年の1人当たり牛肉消費量は5.7キロと92年の約4倍に拡大。肉牛飼育には大量の穀物が必要で、肉牛向け穀物消費量は、計算上では92年比で約30倍に増えた。英科学開発ネットワークのデービッド・ディクソン理事は「途上国の食肉向け穀物需要は激増しており、極めて危険な状況だ」と指摘する。

 価格高騰の結果、「穀物生産が難しい途上国が完全な負け組になっている」(欧州系銀行)。サハラ砂漠以南の07年度穀物輸入見通しは、最近1カ月で50万トンも下方修正された。05年度と比べると320万トンの減少で、ゼーリック世界銀行総裁は「穀物高騰は1億人を貧困に追い込んだ」と指摘する。

 4月下旬にはウクライナが小麦などの輸出制限を解除したことで、一部の穀物価格はやや下落した。しかし、小麦、大豆、トウモロコシなどの主要穀物の価格は1年前と比べ、なお7〜8割も高い水準にある。原油高騰で生産コストも下がりづらくなっており、「価格高騰が続き、多くの人が困難な事態に追い込まれる」(ディクソン氏)との見方が強まっている。

◇バイオ燃料需要増が拍車

 穀物価格の高騰について、米国では政府が増産を後押しするバイオ燃料と、原油などエネルギー価格と同様、投機資金が市場に流入したことが原因と分析されている。

 昨年1月、米ブッシュ大統領は一般教書演説でバイオエタノールの増産計画を打ち出した。これを機にバイオ燃料の需要が急増し、原料となるトウモロコシの作付面積が急拡大した。このあおりを受けて大豆や小麦など他の穀物の作付面積が減少した。「小麦、大豆、トウモロコシの三つの作物が、二つのイスを奪い合う構図」(北原悦男・国際穀物理事会事務局長)にある。

 低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で行き場を失った投機資金が「下落リスクの低い市場」として穀物市場に流入したことも価格高騰の一因だ。「穀物価格が値上がりするほど資金が流入する価格高騰の連鎖」(米エコノミスト)が続く。

 この状況を受け、ブラウン英首相が輸送用燃料の一部をバイオに転換する欧州連合の目標見直しを求めたほか、中国などもバイオ燃料にトウモロコシを使わない方針を決定した。米テキサス州のペリー知事も「州民の食費に大きな影響を与えており、見直しが必要だ」と声明を出すなど国内からもバイオ燃料を推奨するブッシュ政権への批判が出始めている。ただ、バイオ燃料はトウモロコシを大規模栽培する米国の農家に大きな恩恵をもたらしており、米政府がバイオ燃料の増産方針を変更するか不透明だ。

 世界食糧計画(WFP)などが4月末に出した提言は「バイオ燃料の需要増が食糧価格高止まりの一因になっている」と明記しており、今後、国際的にもバイオ燃料への風当たりは一段と強くなりそうだ。

◇ことば バイオエタノール
 トウモロコシやサトウキビなどを発酵させて作ったエタノール(エチルアルコール)で、自動車の燃料などに使う。原料の植物が、成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するので、一方的にCO2を出す石油や石炭などの化石燃料のように地球温暖化を招かないとされる。一方で、バイオ燃料の原料と食糧需要が競合しているといった問題点も指摘されている。