医療ナビ:コレラ 3月、埼玉で食中毒が発生。発症した際の注意点は。
◆コレラ 3月、埼玉で食中毒が発生。発症した際の注意点は。
◇脱水防止、心がけて−−流行国では水、食品に注意
3月下旬、埼玉県内の料理店で、国内で6年ぶりのコレラによる食中毒が発生した。コレラは現代の日本で暮らす私たちにとってはなじみの薄い感染症だが、過去に何度も世界的な大流行を起こし、現在も海外の一部地域で猛威を振るっている。国内外の感染状況や治療法についてまとめた。
毎日新聞 東京朝刊 ライフスタイル 健康 無断転載禁止
◇第7次流行中、06年には世界で23万人超が発症
■感染経路は不明
埼玉県食品安全課によると、3月29日、30日の2日間に同県騎西町内の日本料理店で食事をした6グループの男女30人(10代から80代)が下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴えた。このうち7人と、症状のなかった1人の計8人の便から、コレラ菌が検出された。
原因となった食事は刺し身やすし、煮物、てんぷらなど。発生時の食材で残っていたのはイカだけで、このイカやその後に仕入れた食材、従業員や店内からは、コレラ菌は検出されなかった。発症者や従業員の中で最近、海外に出掛けた人はいない。全食材の仕入れ先や他の卸し先へのさかのぼり調査でも異常は確認されず、感染経路は不明のままだ。
一般に、今回のようなコース料理による食中毒では、原因の特定は難しいとされる。同課は「仕入れた食材に菌が付いていた可能性は否定しきれないが、地域や国内での広がりは全くなく、過度に心配する必要はない」としている。患者のうち2人が入院したが、快方に向かっているという。
■沿岸部に生息
食中毒細菌に詳しい国立感染症研究所(東京都新宿区)の泉谷秀昌・細菌第1部第2室長は「コレラは、東南アジアやアフリカではありふれた病気」と話す。1961年から現在までは「第7次世界流行」のさなかにあるという。06年には世界で約23万7000人が発症し、約2・7%にあたる約6300人が死亡した。
コレラ菌は長さ約2・5マイクロメートル、幅約1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の空豆のような形の細菌で、波状に伸びたべん毛を使って運動する。主に沿岸の汽水域に生息し、泥の中や魚介類の表面に密集していることが多い。
食品や水の摂取により人の体内に入ると、腸内で増殖して毒素を作る。潜伏期間は通常1〜3日。毒素の働きで腸壁の細胞のイオンバランスが崩され、下痢などの症状となって表れる。腹痛や発熱はほとんどなく、「米のとぎ汁のような白っぽく水分の多い下痢が、ひっきりなしに出る」(泉谷さん)のが特徴だ。下痢の量は1日10リットルから20リットルに及ぶこともある。急速に体内の水分と塩分が失われ、放置すれば重い脱水症状に陥る。体温や血圧が下がり、皮膚は乾燥して弾力性を失い、けいれん、虚脱などを経て、最悪の場合、死に至る。
■病原性弱く
コレラ菌は紀元前400年ごろからインドのガンジス川などのデルタ地帯に存在したといわれる。19世紀に初めて世界流行し、1923年までに6回にわたり流行した。日本も江戸末期から明治にかけて流行に巻き込まれた。1858年夏には長崎と江戸で大流行し、数十万人が犠牲になったとも言われる。当時は、人が「ころり」と死ぬさまから「虎狼痢(コロリ)」と呼ばれて恐れられた。
ただし、第6次までの流行の原因となった古典型のコレラ菌は、その後、アジアで発生したエルトール型に取って代わられた。エルトール型は、古典型より感染力は強いが、病原性は弱いと考えられている。死亡率は2%程度で、医療設備が整った先進国ではほとんどゼロだ。
■多くは海外感染
治療法は、下痢で失われた水分と塩分を補い、脱水状態になるのを防ぐのが最も効果的だ。水に食塩、ブドウ糖、重炭酸ナトリウムなどを溶かした電解質の液体を飲ませたり(経口輸液)、点滴で投与する。経口輸液はスポーツ飲料でも代用可能だ。患者はやがてコレラ菌に対する免疫を獲得するので、症状は数日で改善し、菌も体外に排出される。重症の場合は、並行して抗生物質を投与する。
国内でのコレラの発生状況は年間50人前後。ほとんどは海外で感染した例で、今回のような飲食店での食中毒は珍しい。流行地域では、生水や氷、生の魚介類や野菜、果物を避けることが重要だ。
コレラ菌は胃酸に弱く、健康な人なら仮に少量の菌が体内に入っても、感染して重症化することは少ない。ただし、免疫能力や胃酸の分泌量が低下している高齢者や、胃酸を抑える薬を服用している人、がんで胃を摘出している人は感染しやすい。国内では04年、胃の摘出歴のある54歳の男性が、コレラで死亡した事例もある。泉谷さんは「流行国では水や食べ物に注意して予防に努め、もし発症したら脱水状態にならないよう早め早めに対処して」と話している。【須田桃子】
医療ナビ:コレラ 3月、埼玉で食中毒が発生。発症した際の注意点は。 毎日新聞 東京朝刊 ライフスタイル 健康 無断転載禁止
- 2008/05/13(火) 05:33:00 |
- 医療相談・医療Q&Aに関する情報 |
- トラックバック(-) |
- コメント(-)
